毒親育ちユリコの回想

毒親との関係性を子ユリコの目線で東カレ風につづりました。

教育虐待①

『パーン』


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そろばんが机から落ちた。母マチコがユリコのそろばんを弾く手を力いっぱい叩いたのである。本日はもう3回目だ。

 

 

冬、寒さで手がかじかんでいるときに叩かれると激痛だ。ユリコは目に涙をためていた。

 

 

「なんで泣くの!何度同じところで間違えれば気が済むの!!来週、昇級試験受けるって自分で言ったんでしょ!」

 

母マチコが絶叫する。母マチコはそろばんの段を持っており、自身もそろばん教室の先生をしていたことがある。そのためユリコが家でそろばんをしているのを真横で見ており、間違えたらその都度そろばんが飛ぶほどユリコの指を叩くのだ。

 

「ママが悪いの!?」

 

「ううん。ユリコが間違えたから悪いの」

 

「なんで間違えたの?」

 

そんなのユリコだって知りたい。母は「なんでなんで」とユリコを詰めた。そして理由を答えられないと激高しさらにユリコを蹴った。今は夜10時。普通の小学生は寝る時間だ。しかし、ユリコはこのプリントが終わらなければ寝させてもらえない。

 

 

これは日常的な風景だった。父サトルは仕事で帰宅するのは終電、休日は寝てばかりのため、妻が娘を日常的に叩いていることは知らなかった。

 

 

 

ユリコは小学1年目の関所とも言える繰り上がりの足し算で苦戦していた。

そこで連れて来られたのが近所のそろばん教室だった。

 

 

ユリコはそろばんの才能があり3級までは難なく昇級した。コンクールでも入賞し、母は鼻高々で喜んでいた。そろばんの成績がいいと母は機嫌がよかった。そのためユリコは必死に母を喜ばせようと頑張った。

 

 

「もうそろばん辞めたら!?だってアンタやる気ないじゃん!」

 

順調だったユリコのそろばんに陰りが見えたのは2級の昇級試験だった。今まで一発合格していたユリコだったが、2級に落ちてしまったのだ。

 

「そろばん辞めて落ちこぼれて将来ホームレスにでもなったらいいじゃない!」

 

ーそろばんを辞めたらママに捨てられちゃうー

 

当時のユリコにとって母がすべてだった。【そろばんを辞める=母に捨てられる】と本気で思っていた。

 

 

何より母は専業主婦なので家に帰ってからずっと顔を合わせるのだ。ここで機嫌を損ねたらこの先、地獄だ。

 

 

「頑張るから辞めない!」

 

ユリコは涙目で言った。

 

 

「アンタがそろばん続けたいって言ったんでしょ!」

 

今日も母のビンタがユリコを襲った。

母はそれ以降、母マチコは言質取ったと言わんばかりに「アンタが自分で決めたんだから」と言ってユリコの足を蹴ってきた。

 

 

母マチコの体罰は3年生になってユリコがそろばんを辞めるまで続いた。